今から5億7千万年前のカンブリア紀に「爆発」が起きました。それまで存在していなかった(少なくとも化石の証拠がない)多細胞生物が、ものすごい種類、爆発的に登場したのです。しかもその姿は奇々怪々。目玉が5つあるオパピュア、幻想的な形をしたハルキゲニア、そしてあの魅力的な捕食者アノマロカリス(体長はなんと60cm!)…… 現在の地球で「節足動物」は「単枝類」「鋏角類」「甲殻類」「三葉虫類」の4大グループに分類されますが、カンブリア紀には20種類以上の節足動物の基本設計パターンが試され、その多くは絶滅したのでした。
ヨーホー国立公園内のカナディアン・ロッキー山中で発見されたバージェス頁岩の無脊椎動物群の化石は、“カンブリア紀の爆発”について知ることができる“(大きな)窓”です。バージェス頁岩は、海底の大規模な土砂崩れによって作られたと推定されています。その時海底にいた生物はそのまま泥に閉じ込められて深海に運ばれ化石となったのです。この化石群は1909年にウォルコットによって発見されましたが、ウォルコットはすべての化石を「現生の動物」の“延長線上”に位置づけようとして分類しました。この思い込みの強さと、化石の復元の時に立体的な構造を無視して平面にこだわった態度により、彼はこの化石群の意味を徹底的に誤読しました。それを正したのは1971年にウィッティントンが発表した論文でした。ただしウィッティントンも最初は「爆発」とか「悲運多数死」という概念は持っていませんでした。ウォルコットの分類はどこか無理がある、と思ってそれを正そうとしていただけだったのです。「過去に遡るほど生物は“原始的”になる」がそれまでの「テーゼ」でした。しかしウィッティントンは「自分の信念」よりも「化石標本が語っていること」を優先することにしました。「分類が先にあって標本をそのどこかに押し込む」のではなくて「現物の特徴を正しく捉えて、それを分類するべきだ」と。そしてそのためにウィッティントンが採用したのは「化石の解剖」でした。
カンブリア紀に「爆発」が起きました
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